データでみるマーケットの「今」
こんにちは、Duke(デューク)です。
皆さんがアクチュアリーとして将来働くときに、どのような業界で、そしてどの国あるいはどのようなマーケットで仕事をすることを想像するでしょうか。
組織という切り口でいえば、アクチュアリーという仕事はこれまで歴史的にも、またその仕事の性格上からも一定規模以上の組織・団体に属して、あるいはそれらに対して仕事をしてきました。
独立して個人で仕事をするアクチュアリーの場合でも、その顧客は企業等の組織であり、現在個人を相手に仕事をするアクチュアリーは日本でも海外でもごく少数に限られています。
働く場所の例としては、生命保険/損害保険会社、信託銀行、監査法人、公的機関、教育機関、コンサルティングファームなどです。
近年少しずつですが、独立起業するアクチュアリーや上に挙げたような分野以外に活躍の場を広げるアクチュアリーも出てきています。
ここでは現在アクチュアリーが活躍する代表的な業界の一つである「生命保険業界」に注目し、データを通じてマーケットの現状とその展望を見てみたいと思います。
マーケットあるところにアクチュアリーあり?
ほとんどの場合、アクチュアリーが働いている組織(多くは金融機関)はその組織がビジネスを行えるだけのマーケットがあるところに集まっています。保険業界でいえば、日本は現在世界の中でも大きな保険マーケットがあります。
生命保険のマーケットを例にとると、ある国の国民一人あたりの平均所得がある水準よりも高くなると生命保険が売れるようになり、マーケットが拡大するといわれています。
また、死亡保険など“万が一のときのための遺族のための保障”をする種類の保険は特に生産年齢人口(大体15~64歳くらい)といわれる働き盛りの人たちの数がマーケットの規模に影響してきます。
また、国や政府等がどれだけ国民に公的な保障を提供しているか、というのもマーケットを左右します。
これらのことから、現在そして将来どこにアクチュアリーの活躍できる場所がありそうかという視点でいくつかデータを見てみましょう。
データでみる生命保険業界の現在
マーケットの規模
例えば、生命保険の年間収入保険料(保険を買った人が年間支払う保険料の合計)をいくつかの国で見てみましょう。もちろん各国ごとに微妙に定義が異なる場合もあるので、単純比較はできませんが、参考程度にはなると思います。
年間収入保険料(2017年) 国別
年間収入保険料(生命保険)(単位:10億アメリカドル)
国・地域 | 2017 | 2012年実績からの
増減率 |
アメリカ | 546.8 | -3.7% |
カナダ | 51.6 | 29.4% |
オーストラリア | 32.2 | -0.6% |
イギリス | 189.8 | 13.4% |
日本 | 307.2 | -21.4% |
香港 | 49.8 | 72.7% |
シンガポール | 21.5 | 94.0% |
アジア全体 | 1,043.7 | ― |
出典:Swiss Re Sigmaを基に著者試算
為替の影響をなくすため、増減率は現地通貨ベースで計算しています。
次に、世界の各地域の保険料を比較してみます。ざっくりですが、地域のマーケットの大きさを知る参考になるかと思います。
年間収入保険料(2017年) エリア別
年間収入保険料(生命保険)(単位:10億アメリカドル)
国・地域 | 2017 | 全世界合計に占める割合 |
北米 | 598.4 | 23% |
中南米カリブ地域 | 78.2 | 3% |
ヨーロッパ | 858.0 | 32% |
アジア | 1,043.7 | 39% |
アフリカ | 44.9 | 2% |
オセアニア | 34.1 | 1% |
全世界 | 2,657.3 | 100% |
出典:Swiss Re Sigmaを基に著者試算